投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が6月4日~6月8日のドル・円相場の見通しを解説する。
* * *
今週のドル・円はもみあいか。イタリアとスペインで政治の先行き不透明感は払拭されず、金融市場の収縮懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペースを見極める展開となりそうだ。また、貿易戦争への懸念はドルの下押し要因なろう。
イタリアの新政権による組閣の失敗でリスクオフのムードに振れた後、組閣の再調整で反欧州連合(EU)色は薄められるとの期待から、ユーロの買戻しが予想される。ただ、スペインのラホイ首相に対する不信任決議案など、欧州の政治情勢は不安定化しており、警戒は根強く残りそうだ。
こうした欧州政治の混迷は米金融政策にも一定の影響を与える可能性がある。実際、ブレイナードFRB理事は緩やかな利上げが適切としながらも、イタリアの問題に触れ「調整の用意」と政策変更の可能性を示唆している。連邦公開市場委員会(FOMC)を翌週に控え、ドルに関しては調整による売り買いが交錯する見通し。
一方、米トランプ政権は、鉄鋼・アルミ製品の輸入に関しカナダやメキシコ、EUに対する輸入関税の追加を決定し、貿易戦争への懸念が再燃。5月30日に発表された1-3月期国内総生産改定値の下方修正も意識され、景気の先行きに不安が広がればドル売りを誘発しよう。
【米・5月ISM非製造業景況指数】(5日発表予定)
5日発表の米5月ISM非製造業景況指数は58.0と、4月の56.8を上回る見通し。5月30日に発表された1-3月期国内総生産(改定値)は下方修正されており、ISM指数で景気の先行きに不安が広がればドル売りを誘発しよう。
【米・前週分新規失業保険申請件数】(7日発表予定)
7日発表の前週分新規失業保険申請件数は、低水準を維持し雇用情勢の安定的な改善が示されるか注目される。4月下旬以降は小幅ながら増加傾向がみられ、雇用情勢の悪化に思惑が広がれば金利先高観は一段と後退するだろう。