ここ10年ほどで、都心部を中心に一挙に増えたのがタワーマンション。今や、タワマンが建つ街=人気の街という図式が成り立ち、タワマン在住=成功の象徴のような感さえある。ところが、大手不動産会社の中堅社員Yさんによれば、不動産会社にとって「タワマン販売」というビジネスは、意外とオイシくない面もあるそうだ。Yさんが語る。
「タワマンが難しい最大の理由は、完成までにあまりにも時間がかかることです。私が初めて携わったタワマンの場合、計画が持ち上がり、敷地の調査から用地の取得完了までに7~8年。建物の取り壊し、整地、基礎工事と進み、建物がだんだんと高くなっていくまでにさらに数年を要し、ようやく販売を始めた時はかれこれ10年目。最終的に住民が住み始めるまでには10数年かかりました」
10年先のことを正確に予想することができる人間などいるはずがない。もちろんそこを見越して商売をするのがプロだが、「景気」という化物を前にすれば、何もできることがないというのが本音のようだ。
「それだけ時間がかかってしまうと、売り始める時に景気がどうなっているかがまったく予測できません。苦労に苦労を重ねたタワマンの完成が近づき、『じゃあそろそろ売り出すか』という時に、景気がどん底で、マンション購入などとんでもないという状況になっているかもしれませんし、鋼材価格や建築資材、現場の職人の人件費がどう変動しているかも分かりません。
一帯の土地が大幅に下落していれば、当然価格にも反映させないといけません。儲けが出るような価格を付けたところで、売れなくては何の意味もありませんから。結果的に全戸売れたのに、利益がまったく出ないようなこともあり得るわけです」(以下「」内はYさん)
東京・西新宿には来年、60階建てのマンションが完成するが、こちらの場合、構想から完成まで約25年を要している。タワマンの完成までには、長いスパンが必要となるのだ。