住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「所沢」(埼玉県・所沢市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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所沢といえば、何と言っても有名なのは西武ライオンズ。現在のエース・菊池雄星投手は、入団時に「所沢はもう少し都会かなと思っていた。(出身地の)岩手に似ている」との感想を述べ、周囲を苦笑いさせましたが、ともかくプロ野球チームの存在によって知名度は全国区。そして、西武鉄道の2線が交差する“西武城下町”は、いま大きく変わりつつあります。
鉄道路線は西武池袋線と西武新宿線の2線。池袋線で池袋まで最速で20分強、新宿線で新宿まで最速40分弱(いずれも有料特急以外の最速時間)ですが、運賃は池袋まで340円、西武新宿まで370円と、リーズナブルな印象を受けます。都心まで2線のアクセスがあるのは心強いところ。1駅隣りの秋津に出れば、JR武蔵野線への乗り換えも可能です。
道路状況は、東京近郊の衛星都市の中でもワーストクラスかもしれません。主要国道からも高速道路の出入り口からも離れているうえ、駅周辺の道路は基本的に片側1車線。線路が町の東西を完全に分離しているうえ、踏切なども多く、バスに乗っても大渋滞で到着時間がまったく見えないこともしばしばです。
これまで通過していた客をごっそり取り込めるか
そんな所沢の街がいま、大きく変わりつつあります。今年3月、東口に商業施設「グランエミオ」が完成。これまで買い物その他は「所沢駅=西口」でしたが、バスターミナル以外に何もなかった東口がにわかに活気づきました。
現在も駅ビル建設は続いており、2020年には第2期が完成する予定。さらに、西口の西武車両基地の跡地と、「日東地区」と呼ばれる所沢東町にも高層ビルが建つことになっています。駅前には西武百貨店があり、メインストリートのプロペ通りは常に人通りが絶えず、これまでも十分にぎわってきた所沢ですが、前途は洋々といった感さえあります。