高齢者はお金を借りられない――多くの人がそう誤解しているかもしれない。それでは定年後に不意の出費が必要になったとき、どんな融資が利用できるのだろうか。
男性Aさんが68歳の時、妻が脳梗塞で倒れて緊急入院。退院まで2か月ほどかかる。手術代や入院費など医療費の窓口負担が約60万円、付き添いの費用などを合わせると100万円ほどを至急用意しなければならない。そんな時に頼れるのが、福祉医療機構の公的な年金担保貸付だ。
年金担保貸付は、いわば年金の“前借り”制度だ。Aさんの年金は15万円だから、融資限度額は年間支給額の8割となり、144万円まで借りることができる。返済は原則15回分割(2年6か月)で年金から徴収される。ファイナンシャルプランナーの廣木智代氏が語る。
「少ない年金から返済するのだから借入額はできるだけ減らしたい。入院費は一見高く見えても、高額医療費制度で補填されるから負担額は月に3万~4万円。食費などの実費を合わせても月7万~8万円でしょう。病院に相談すれば分割払いを認めてくれるケースもある。いくらかかるかを冷静に計算し、必要以上の大金を借りてはいけません」
自宅のバリアフリー・リフォーム
妻は退院したが車椅子生活。自宅をバリアフリーにするには最小限のリフォームでも200万円かかる。
この場合は、銀行のリフォームローンの他に、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度が活用できる。
「65歳以上の高齢者の介護に必要なリフォームなら融資額は250万円までで、収入基準も2人世帯なら月収約40万円以内と厳しくありません。年金世帯なら借りられます。返済は7年、連帯保証人がいれば無利子、いない場合も金利は1.5%と低い」(ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏)
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のリフォーム融資も79歳まで利用可能だ。融資限度額も1000万円と高く、返済が難しい場合は金利(0.75%)だけを支払い、死後に相続人が自宅を売却して一括返済する「高齢者向け返済特例」の制度がある。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号