新築、中古ともに高水準で推移している東京23区のマンション価格。ただでさえ一般層は手を出しにくい状況だが、千代田区、港区、渋谷区の物件はさらに「別格」とも言えるインフレ状態にあるという。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員は、現在の状況を以下のように説明する。
「千代田区、港区、渋谷区の新築マンションに関しては、市場全体の趨勢とはまた違ったレベルでの高値を示しています。とりわけ2017年からその傾向が顕著です。分譲戸数の減少により高額物件の影響が大きくなりやすい点を考慮しても、ここ1年の3区の平均坪単価は明らかに抜きん出ています」(井出氏、以下同)
具体的な数字を見てみると、直近(2018年4~6月)の新築マンションの平均坪単価は千代田区が673万8000円、港区が657万円、渋谷区が559万5000円。23区全体の平均が300万円台であることを考えると、その突出ぶりは際立っている。
ここ1年の傾向が最もわかりやすく数字に表れているのが渋谷区だ。2016年の10~12月の新築マンションの平均坪単価は360万4000円で、この時点では23区内の“2番手グループ”である中央区や新宿区、文京区を下回っていた。しかし2017年の4~6月の統計で506万7000円と一気に飛躍し、その後も現在に至るまで500万円台を維持している。
井出氏によると、この高騰は海外の投資家の参入によってもたらされたものだという。
「東京の物件はシンガポールやニューヨークなどに比べて割安感があり、利回りも高い。国内の投資家たちが敬遠するような物件も、グローバルな目線で見れば投資対象としてまだまだ魅力的なのです」
日本国外からやってくる投資家や富裕層が、一般の購買層とはまったく異なる論理で動いているという点も興味深い。超一等地で築年数の浅い物件であれば、中古マンションであっても「売り手側の言い値に近い価格で買われている」(井出氏)というから驚きだ。