75歳で後期高齢者になると、健康への不安が募るようになる。近年は75歳以上でも加入できる医療保険がテレビCMなどで盛んに宣伝されている。「子供に心配をかけないために入っておこうか」と心が揺れる人も少なくないはずだ。
だが、ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏は、75歳以上の後期高齢者の医療保険加入に否定的だ。
「高齢者向けの医療保険は、保険料は高い割に受け取れる金額が低い。しかも保険料は基本的に掛け捨てです。一方、75歳からは医療費の自己負担が1割(※現役並み所得者は3割)になるので病気になっても家計への影響は限定的。
たとえ高額な治療が必要になっても高額療養費制度が使えますし、今は入院日数がどんどん短くなっていて、75歳以上のがん患者で平均30日未満です。がん保険の入院保障は1日1万円程度だから、支給される金額は、がんでも30万円に満たない。この程度の金額を受け取るなら月々の保険料を払うよりも自分で貯蓄していたほうが効果的です」
医療費を抑えたい日本では今後ますます入院の短期化や在宅医療への流れが進むと予想される。
「保険会社は高齢者の不安な感情を煽りますが、宣伝文句に乗せられず、冷静に“本当に医療保険は必要なのか”を考えないと、虎の子の老後資金が圧迫されるだけになってしまいます」(森田氏)
75歳にとって医療保険は「入りどき」ではなく「やめどき」なのだ。
※週刊ポスト2018年8月31日号