健康保険組合は全国に1394あり、加入者は約2900万人にのぼる。だが、ここにきて解散が相次いでいる。背景にあるのは財政難だ。健保組合が解散すると、加入者は国からの補助金が拠出されている「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に移る。協会けんぽに移ることで、様々な“不利益変更”が生じる。
健康保険には、「出産育児一時金」や、会社員が病気やケガで仕事を休んだ時の「傷病手当金などの保障、給付をすることが法律で定められているが、多くの健保組合では、そこに独自の保障を上乗せする「付加給付」を設けている。たとえば、本来は5万円前後かかる人間ドックを5000円程度の自己負担で受診できたり、医療費の自己負担上限を月2万~3万円程度に定めていたりするケースも多い。
それが解散で付加給付という“特典”が受けられなくなってしまうのだ。
退職後世代へも影響する。対応に注意が必要なのは、定年退職後に勤めていた企業の健保組合の「任意継続」を選んでいるケースだ。
サラリーマンが定年退職後も2年間まで企業の健保組合に加入し続けることができる制度だが、とくに退職した翌年は、現役バリバリで働いていた前年の所得に応じて保険料率が決まる国民健康保険よりも有利であるのが一般的で、選択する退職者は少なくない。
任意継続中に加入していた健保組合が解散した場合、国民健康保険ではなく、同じ会社の後輩である現役世代と同様に、協会けんぽに移行することになる。
「任意継続の場合も、現役と同様にデータは全て移管されるので、特別の届出や申請手続きは必要なく、新保険証も協会けんぽから直接、自宅に郵送されてくる。ただし、定年後は前もって組合の動向を知る機会が少ないため、解散決定後に初めて移行を通知されるケースが多い。突然の“特典剥奪”にショックを覚える人は少なくなく、『資格証明書』を前もって手配しておくのも難しくなる」(協会けんぽ地方支部幹部)