定年退職後、「終活」への準備として、多くの人がまず手をつけるのが、持ち物の整理だ。この生前整理の方法に、いま新しい波が押し寄せているという。
神戸在住の主婦・黒田和代さん(68才)は、2児を育てながら保育士として40年間勤め上げ、60才で定年退職。その途端、使わない“持ち物”が大量に発生した。
「外出の頻度が減り、今まで身につけていた服やかばんなどが不用になりました」(黒田さん)
フリーマーケット(以下フリマ)に持って行くのも大変だと困っていると、ある方法を息子の妻(38才)にすすめられた。
「売りたい物をスマホで撮影して、品物の説明文や希望価格をつけて出品するだけ。慣れたら5分で出品手続きが終わるので、本当に簡単です」
そう言って笑顔を見せる黒田さんが利用しているのは、「メルカリ」だ。
メルカリとは、スマートフォンを通じて簡単に個人間で売買を楽しめるフリマアプリ。1日100万品以上の出品があり、売れた商品の約半分が24時間以内に取引されるというスピーディーさが魅力だ。
松ぼっくりやトイレットペーパーの芯など、一見ゴミに思えるようなものでも、買い手がつくということで話題を集めてきた。前出の黒田さんは、すでに168品を取り引きした。
「思い出がある大事な物でも、私が死んだらゴミになってしまいます。それなら必要な人に譲りたい。山のようにあったタオルやハンカチも数秒で売れて、部屋がスッキリしました。子供たちに荷物を残すのは申し訳ないですからね」(黒田さん)