たしかに、年金制度はコロコロ変わって信用できないし、年金財政も破綻しかかっている。それでも、人生100年時代を生きる私たちにとって「年金」は、なにものにも代えがたい「老後の命綱」であることは変わらない。
標準的な夫婦(サラリーマンと専業主婦)で、月額のモデル年金額は22万1000円。今の大卒の初任給は20万6000円なので、一切仕事をしなくても、大卒新人社員以上の収入を得られるということだ。決して多くはないが、日々の生活を送るのには充分な金額だろう。
仮に、夫婦で元気に100才まで生きたとしよう。65才から年金を35年間受け取ったとすると、モデル世帯では総額でなんと「9282万円」にも達する。リタイア時点で約1億円も貯金がある夫婦がどれだけいるだろうか。公的年金は、「死ぬまでもらい続けられる」という点で、絶対に有効活用したいし、しなければならない制度なのだ。
しかし、政府は虎視眈々と年金のカットを狙っている。「年金博士」として知られる、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さんが指摘する。
「もともと年金制度が始まった当時(1942年)は『55才』になったら受給開始でした。ところが、戦後のインフレで年金財政が悪化し、1986年に男女ともに『60才』に引き上げられた。その後、年金官僚たちの放漫な管理・運用もあって財政はさらに悪化し、1999年に行われた5年に1度の財政検証のタイミングで『65才』への引き上げも決まりました。実は、これから政府は『68才』、そして『70才』へと受給開始を引き上げようと検討しています」