【書評】『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』/松尾昭仁・著/集英社/1400円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
本書は、お金に困る人と困らない人の行動パターンを、様々な視点から対比して、取りまとめたものだ。あまり書くとネタばれになってしまうので、ひとつだけ紹介すると、懇親会で、料理をガツガツ食べている人はお金に困る人、コミュニケーションに時間を割く人は、お金に困らない人といった具合だ。
本書に書かれていることは、当を得ていると私も思う。要は、効率を考えて、要領よく行動できる人が、お金に困らないということだ。著者は、そうした法則を1万2000人と出会って発見したとしているが、本書に書かれていることの大部分は、いままでも指摘されてきたことだ。本書の特長は、それらを網羅し、きちんと整理したことにある。
ただ、本書のもっと大きな価値は、本の作り方自体にあると思う。本書は、本当に読みやすい。スラスラ読めるというより、リズミカルに、まるでスキップしているように、どんどん前に進んでいってしまうのだ。
著者は、出版プロデューサーとして、素人が自分の作品を商業出版に結び付けるためのセミナーを行なっている。実際、それを通じて多くの「作家」を生み出している。商業出版というのは、あくまでもビジネスだから、売れる本だと出版社が判断しなければ、出版は実現しない。売れるかどうかの重要な基準は、読みやすいかどうかだ。