2019年1月から、相続のルールが40年ぶりに大きく変わる。そのポイントは、「女性にとってメリットの大きい制度になる」ということ。考えてみれば、これまでがおかしかった。仕事を辞めたり、習いごとや友達と会うことも諦めて、長期にわたって献身的に夫の親を「介護」し続けても、妻は遺産を一銭も受け取れないなんて…。
子の配偶者は相続人にはならないため、妻はどれだけ義理の親に尽くしても、相続の法律上は蚊帳の外だった。ところが今回の改正では、介護した妻には「特別寄与料」、つまり介護の“対価”が請求できるようになるという。1万4000件以上の相談を受けた経験を持つ、相続コーディネーターの曽根恵子さんが話す。
「介護した妻は、故人の生活に貢献したわけだから、報われる余地を作ろうということで生まれたのが、この新ルールです。これまでも介護で尽くした場合には『寄与』という考え方はありました。しかし、寄与料を受け取るためには、他の相続人の同意が必要な上に、妻ではなく相続人である夫に支払われるものでした」
たとえば、妻が介護を続けてきた義父が亡くなったとしよう。妻が「特別寄与料」を請求して、200万円が認められた場合、相続人の長男と長女が受け取るはずだった遺産から、半分ずつの100万円が均等に差し引かれ、妻に支払われる。
「現時点では、特別寄与料がいくらぐらいになるのか、その詳しい算定方法が決まっていません。ただ、過去の事例に照らせば、『介護にかけた時間×都道府県が定めた最低賃金』で計算されたり、『介護のために辞めた仕事で、本来得られていたはずの賃金』、または『ヘルパーを雇ったら、いくらかかっていたか』などが考慮されて算定されると考えられます。過去に裁判所が『時給850円換算』で計算した事例もありました。そうなると、数十万~数百万円程度に落ち着くと考えられます」(曽根さん)