有価証券報告書の虚偽記載の疑いで逮捕され、日産自動車の会長職を解任されたカルロス・ゴーン容疑者(64)。2010年度から2014年度にかけ、有価証券報告書に記した同氏の役員報酬は約49億8700万円だったが、実際は約99億9800万円だったという。
1年あたりの報酬は、平均すると約20億円。これについて「自分だったらトップがそんなにもらっている会社にいたくない」と考えるのはネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。その真意について、中川氏が述べる。
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ウェブサイト「平均年収.jp」によると、2010年度の日産自動車の従業員の給料は627万円。以後4年間は684万円→705万円→699万円→777万円と推移しています。平均すると約700万円です。ゴーン氏の平均年収である20億円は、同社の一般従業員286人分に相当します。工場のラインで働く従業員には、期間工や契約社員などもいるでしょうからもっと安くなることでしょう。
もしも自分が日産の従業員だったら……と考えたら、大きなフロアを見渡し、「ここにいる全員分の給料を足してもゴーン会長には敵わないんだよなァ……」とため息をついてしまいそうです。いや、分かるんですよ。あれだけのグローバル大企業のトップならばそれだけのカネをもらう価値はあるのでしょう。同氏だって競争を勝ち抜き、成果を出してきたからこその報酬額です。バリバリのメジャーリーガー並みの給料をもらってもいいでしょう。
ただ、わかってはいるのですが、そんな人間が同じ会社にいるのはイヤだというのが本音です。メジャーリーガーや世界的人気のロックバンドのような人は、「神の領域」で自分の手が届かないところにいる異次元の存在だから、彼らが稼ぐカネには何とも思わない。ただし、自分が所属する組織の上の方の人は、本来手に届く世界の人であるはずなのに、異次元のカネの稼ぎ方をしていたら、もう自分が惨めに思えて仕方なくなってしまいます。
それこそ工場の人間にしても、本社系の人間にしても、「そんなに真面目に働かなくてもいいかな」「こんなに働いても、あんなに給料が増えることはないんだよな」なんて思ってしまうかもしれない。
さらには、わざと会社の足を引っ張って何らかの不祥事を起こすことにより、トップが謝罪に追い込まれたり、減俸処分になる様を見てみたい、なんて邪なことを考える人間まで出て来るかもしれません(実際にそんな行動を起こす人はいないと思いますが)。