日本人の平均寿命は男性約81.1歳、女性約87.3歳(2017年)に達した。実は、日本人の“本当の寿命”はもっと長い。同い年の2人に1人がその寿命まで生きる「50%生存年齢(寿命)」を試算すると、現在55~60歳の男性の「2人に1人」は90歳超、女性の半数は100歳近くまで生きる――そう推定されているのだ。
人生100年時代は“遠い将来世代”の問題ではなく、現在の50代、60代の世代が直面する現実なのだ。しかし、その危機意識が、広く社会に共有されているとはいえないだろう。「長生き」が幸せとは限らない――。世界有数の“長寿大国”となった日本では、そんな新しい価値観が定着し始めている。長く生きるほど、蓄えが底をつくリスクは大きくなるからだ。
でも、「病気になる年齢」は変わらない
今年60歳の世代が大卒で社会人となった1980年、日本人男性の平均寿命は今よりずっと短い約73歳と計算されていた。
「人生長くても80年。定年まで働いて、第二の人生の10数年は悠々自適で暮らしたい」
“新人サラリーマン”の頃、漠然とそんな老後の人生設計を思い描いていたはずだ。それがいま、寿命が大きく延びているにもかかわらず、昔のままの発想で人生プランを立てようとしている人が多い。
年金や医療保険、定年など社会の様々な制度も「人生80年」を前提につくられているのだから、危機感が持てないのも無理はないだろう。