11月末に、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された今回の主要20か国・地域(G20)首脳会議は、大いに注目されていた。今回のメインテーマは、貿易摩擦問題であり、特に12月1日の米中首脳会談で、何らかの合意があるのではないか、といった期待感が、マーケット(金融市場)にあったからだ。
この米中首脳会談では、中国が貿易不均衡を是正する方向で、米国に譲歩する姿勢を見せた。それに対応して、米国は、2019年1月1日から発動を予定していた「2000億ドル相当の中国製品に対する関税の25%引き上げ」を、90日間先延ばしにすることを決めた。
米中の合意の内容としては、2019年1月からの追加関税の拡大に90日間の猶予期間を設ける。ただし、中国は、米国の大豆などの農産物の輸入を増加させる。90日以内に中国の「強制的な技術移転、知的財産権侵害、サイバー攻撃」の改善に関して、米中間で合意がなされなければ、追加関税の拡大を実施する可能性がある。
今回の米中の合意は単に問題を先延ばししただけに過ぎないのではないか。中国が90日以内に、米国が納得する程の大幅な譲歩ができるとは考えにくいからだ。
もちろん、米国側も90日以内にすべてを改善せよと求めている訳ではなく、90日以内に米中間で新たな合意をすることを条件にしているのだが、米国が満足する程の合意に至るとは考えにくいだろう。
言い換えれば、「90日以内に米中間で新たな合意をすること」は、今回の貿易戦争に関して、「米国の圧勝、中国の完全な敗北」を意味することになる。面子を重んじる中国の立場を斟酌すると、それは受け入れがたいのではないか。
確かに90日間の猶予期間は設定されたのだが、果たして手放しで良かったと言えるのか、大いに疑問だ。むしろ、90日後に大問題が勃発することになる、あるいは、90日の期限が近づくに連れて不安が拡大していくことになるのではないか、と危惧している。
現時点では、問題を先送りしただけで、何ら具体的な進展は見つかっていない。つまり、今回の米中間の合意は、猶予期間を設けただけで、そもそも合意と呼べるような内容ではない、ということだ。