人生100年時代、年金以外の収入を確保すると同時に、ボケずに健康なからだを作っていくことも重要になる。新著『お金の整理学』を上梓したお茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古氏は、30歳から株を買い始め、95歳の今なお株投資を続けているという。歳を重ねてからも株投資を続ける意義とは──。
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日本では、月給のようなかたちでもらう勤労所得は「よいお金」で、投資などで得た不労所得は「あまりよくないお金」という考え方が支配的のようだ。
しかし、成長性が見込める企業を探して、そこにお金を投じていく社会貢献だと考えれば、株投資を「品がよくない」ことととらえるのが誤りであることは明らかだ。もちろん、急な値上がりや短い期間で大金を手にするための売買を想定してはいけない。長い目で見て、社会の役に立ちそうな企業を選んで投資していく。いま流行りの銘柄を追いかけるわけではないから、時代を先取りするものが何かを考えるための情報収集や社会勉強も欠かせなくなる。
さらに、投資した企業が成長するかを見定めたいと思うことが、長生きのモチベーションにもつながる。
最近になって、私はドローンが面白いと思っている。社会を大きく変える存在になるのではないかと期待しているのだ。
将来的には、宅配の仕事の大部分はドローンに置き換えられることになるのだろう。ドローンでビジネスを展開する企業が出てくれば、株を買ってみたいとも思っている。ただ、ドローンが配達のために街中を飛び回る社会が、すぐにやってくるわけではない。やはり、10年くらいはかかるのではないか。そうなると、「少なくともあと10年は生きて、自分が投資した企業が成長し、予想した通りの未来がやってくるか、この目で見届けたい」という気持ちが出てくる。
年寄りたちが、「もう十分に生きたから、いつ死んでもいい」などといっていられなくなる。
長期的視座で株を買う場合、投資先の企業は、いわば花の〈つぼみ〉である。大輪の花を咲かせる姿を見る前に、死ぬわけにはいかない。そんなふうに思えることも、株投資の魅力の一つだ。