4月に消費税率が8%に引き上げられるが、2015年10月には、さらに税率10%への引き上げが予定されている。消費税10%への増税が実施されるか否か、本年中に結論が出る予定だが、日本経済、また株式市場への影響はどうなるのか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した、赤城盾氏が解説する。
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2014年の日本経済にとって最大のリスクは、4月に実施される消費税8%への増税であり、2015年10月に予定されている10%への増税に向けての議論の進展であろう。さらにいえば、その評価に関して、国内マスメディアの論調と海外投資家の認識に大きなギャップがあるように思われることが、株式市場にとっては大きな不安材料である。
2014年度の日本経済を前年度と比せば、我が国民の懐から、消費増税分の5兆円が確実に消える。仮に景気が上向いて多少収入が増えたとしても、皆がこぞって貯金を大幅に取り崩さない限り、日本経済はそれに応じて縮小せざるを得ない。
しかし、それに対して政府は2013年度補正予算5兆5000億円をもって当たるから、年度を通せば財政は景気に対してほぼ中立で、増税前の駆け込み買いの反動は懸念されても、日本経済にとって大きな脅威とはならない。そう、日本のマスメディアは一様に説く。むしろ、一般会計の歳出額が過去最大となったことを捉えて、財政健全化への努力が足らないという論調が主流のようだ。
大事なことが忘れられている。1年前に、発足直後の安倍内閣が放ったアベノミクス「第二の矢」、13兆円の2012年度大規模補正である。
公共事業がどのように進捗して現金が人々に行き渡って行くのか正確なタイミングは分からないが、昨年2月26日に成立したこの補正が効果を発揮したのは概ね2013年度に入ってからであろう。その恩恵が、2014年度には消える。結論として、現状の2014年度の財政は、わが国のGDP(国内総生産)約500兆円に対してざっと2%の強烈な縮小要因となる。
このような懸念が、安倍内閣が消費増税を正式に決定して以降、市場に燻っていた。おそらく、昨年末に2014年度予算案が固まり、懸念が現実となったことを受けて、海外投資家は年頭から日本株を大幅に売り越しているのである。
このリスクについては、わが国においても、マスメディアはともかく財政当局は当然熟知していよう。それでも、次代のための財政健全化を錦の御旗にして消費税の倍増を企図しているところで、増税分を超えた景気対策を組むのは政治的なリスクが大きい。
安倍晋三首相が世界経済フォーラムでスイスまで出張って宣言してきた法人税の減税にしても、消費税の倍増とセットとなれば暴動が起きてもおかしくないような話であって、早期の実施は困難であろう。
財政当局としては、ここは、アベノミクスやらオリンピックやらNISA(少額投資非課税制度)やらで気分を盛り上げてもらって、2014年度の上半期だけでもなんとか無事にやり過ごし、消費税10%を神にすがってでも勝ち取りたい一心であろう。
しかし、国民の気分はごまかせたとしても、海外投資家が牛耳る株式市場がそれまで持つかどうか。
※マネーポスト2014年春号