為替市場で日米の実質金利が注目されている。日本の実質金利が米国を上回っており、その金利差が拡大しているからだ。強力な円高要因として浮上している。
実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた数値のことで、名目金利やインフレ率によって、何種類もパターンが存在する。為替市場で注目されているのは、名目金利を日米の政策金利とするものだ。以下、インフレ率にCPI(消費者物価指数)の前年比の数値を使った場合の実質金利をみてみよう。
現在、日銀の政策金利は0%、米FRB(連邦準備制度理事会)は2015年11月まではほぼ0.25%だったが、12月に利上げをしたため0.5%になっている。インフレ率は、日本は0%前後で推移しているが、米国は上昇基調が顕著。その結果、米国は利上げをして政策金利が上昇したにもかかわらず、実質金利のマイナス幅が拡大しており、日米実質金利差も日本>米国の状態で拡大しているのだ。
●日米実質金利の推移
【日本の実質金利/CPI、米国の実質金利/CPI、日米実質金利差(日本-米国)】
2015年9月:0.10%/-0.10%、0.25%/0.00%、-0.15%
2015年10月:0.10%/-0.10%、0.05%/0.20%、0.05%
2015年11月:-0.10%/0.10%、-0.25%/0.50%、0.15%
2015年12月:-0.10%/0.10%、-0.20%/0.70%、0.10%
2016年1月:0.10%/-0.10%、-0.90%/1.40%、1.00%
(※2016年1月の日本のCPIは東京都区部)
為替市場では、金利が高い通貨が買われやすい。そのため足元の円高進行については、「対ドルで実質金利差が拡大していることが大きな要因」とみる市場関係者が少なくない。また、ある市場関係者は次のように指摘する。
「そもそも、今年はFRBが3~4回の利上げを想定していて、それが実現すれば、米国の実質金利も日本を上回り、その差が拡大していくと考えられていました。だが、現在のマーケットでは、FRBの追加利上げの可能性は低下し、逆に利下げに転じる可能性を織り込みつつあります。
もし、利下げに転じた場合は、世界の金融市場、特に株式市場は大きく好感するでしょうが、日本に限っては、相対的に実質金利がさらに高くなることで、一段の円高進行が予想され、株式市場にはダメージとなる恐れがあります」
ヘッジファンドを始めとする海外の投機勢は、こうしたシナリオで、すでに動いているといわれている。日本の対応策としては、マイナス金利の拡大や、為替市場での円売り介入などが考えられるが、果たしてどこまで効果があるか――。