定年退職時、多く人が悩むのが、退職金を一括で受け取るのか、分割するのか、あるいはもらった退職金で住宅ローンを一括返済してしまうかという問題だ。
大卒・総合職の一般的な退職金は約2374万円、高卒(生産・現業労働者)で約1821万円だ。退職金は、一括でもらう「一時金方式」を選ぶか、分割してもらう「年金方式」かで、手取り額が大きく変動する。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、「得なのは一括」と指摘する。
「一括でもらうと『退職所得控除』が適用され、平均的な水準の退職金なら非課税になります。しかし、年金方式だとほとんどが課税対象となり、所得税や住民税などがのしかかってくる。例えば、退職金2000万円のケースでは、手取り総額で60万円以上の差が出ることがあります」
定年後、退職金を利用して一気に住宅ローンを完済しようとする人がいるが、老後資金に不安があるなら「いい手」とはいえない。社会保険労務士で「年金博士」として知られる北村庄吾氏はこう解説する。
「住宅ローンを組む際、ほとんどの人は団体信用生命保険(団信)に加入している。団信に入っていれば、借入人が死亡すれば以降の返済が不要になる。無理に早期返済する必要はありません。
何が起こるかわからない老後は、手元資金を残しておくほうが安心できる。年20万円以上金利を支払っているなら一気に返済してもいいが、年5万円程度なら月々の返済を続けるべきです」
※週刊ポスト2019年1月1・4日号