賃貸マンションやアパートなどの集合住宅に暮らしている人の中には、「隣人が発する騒音や異臭に悩まされている」というケースも少なくないだろう。はた迷惑な隣人には引っ越してほしいと誰しもが思うだろうが、不動産関係の法律問題に詳しい瀬戸仲男弁護士は「たとえ迷惑を被っていたとしても、隣人という立場から直接的に退去を迫るのは困難です」と語る。
「仮に101号室と102号室に暮らしているとして、お互いの間には契約関係はないので、契約上の責任などを追及することはできません。また、面と向かって話をすることでさらに大きなトラブルに発展することもあるので、どれだけ腹が立っていても、まずは大家や管理会社から注意してもらったほうがいいでしょう。賃貸人にとっても迷惑な賃借人を放っておくことは不利益につながるため、それなりの対応をとってくれることが期待できます」(瀬戸弁護士、以下同)
民法601条によって規定された賃貸借の定義上、賃貸人は賃借人に対して「使用・収益させる義務」が課せられている。隣人の騒音や異臭による「生活妨害(ニューサンスと呼ばれる)」に賃貸人が対処しなかった場合、この義務を果たしていないと考えられ、実際に裁判で家主に対する損害賠償請求が認められたケースもあるという。
また、隣人だけでなく家主との間にトラブルが発生するケースも考えられる。しばしば争点となるのが、「ペット可・ペット禁止」に関する問題だ。例として入居時の説明ではペット可だった物件が、入居後にペット禁止になるケースなどが考えられるが、「どんな場合であっても、契約内容の変更は双方の合意がなければ無効です」と瀬戸弁護士は語る。
「募集広告や契約書、重要事項説明書にペット可と記していた場合、後になって『何月何日からペット禁止になります』と一方的に言われても従う必要はありません。どうしても禁止にすると家主が言うのであれば、きちんと交渉したうえで、家主に対してそれなりの条件を要求すべきでしょう」
さらに典型的な事例として、「契約更新をしない」と家主から一方的に退去を迫られるケースが挙げられる。借り手からすると、契約が終了する以上は引っ越さなければいけないと考えがちだが、瀬戸弁護士によると「原則として、法的には従う必要はない」という。