近年、様々なしがらみを避けるべく墓に入らず、「海洋散骨」を選択するケースも増えているが、そこには負の側面もあるという。ある男性は、妻の生前の希望通り、業者を通じて海外で散骨した。だが帰国後に「妻の墓に手を合わせたい」という切ない気持ちが湧き上がってきた。浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が言う。
「散骨時は平気でも、時間が経って冷静になってから“遺骨ロス”に苦しむ方がいます。しかも遺族全員が海洋散骨を認めることはほぼ皆無で、賛成派と反対派の関係がこじれることもあります」
そして多くの男性が注意すべきは「妻の気持ち」だ。葬送ジャーナリストの碑文谷創氏が言う。
「女性の7割以上は、婚家の墓に入ることを嫌がっています。夫は妻の気持ちに鈍感です。そこで死後別々の墓に入る『死後離婚』も増えていますし、永代供養墓、散骨などを選ぶ夫婦の場合、主導権を妻が握っているケースが多いです」
「墓を守る」ことが難しい時代である。
※週刊ポスト2019年1月18・25日号