賃貸物件を経営する大家にとって、悩みのタネのひとつは“迷惑な住人”の存在と言える。家賃滞納から騒音、異臭、部屋の又貸しに至るまで、賃貸経営に付随する住人とのトラブルの内容は多種多様。しかし大家にとっては、一度契約してしまった以上、迷惑だからといって退去させるのは簡単ではない。不動産関連の法律問題に詳しい瀬戸仲男弁護士が、ある大家からの相談事例を紹介してくれた。
「住人の1人が賃借している自宅マンションの部屋でリラクゼーションサロンを始めてしまい、大家から『住居として貸しているのにお店にされては困る。なんとかしてほしい』と相談されたことがあります。アロマオイルのにおいを大家は『悪臭』だと言って抗議したのですが、住人側は『アロマの香りは芳香で悪臭ではない』と主張して折り合わず、最終的には『用例違反』(賃貸借契約の内容に違反)として退去してもらうことになりました。
この場合、住居として借りた物件を営業施設にしたことが用例違反に該当したわけですが、一般的には借り手がきちんと賃料を支払っている場合、出ていってもらうのは難しいのが現実です。仮に裁判所の判断を仰ぐ形になった場合も、生活の基盤である住宅からやすやすと追い出すことはできない、と裁判官は考えます」(瀬戸弁護士、以下同)
用例違反や騒音や異臭については基準が曖昧なケースも多く、実際の状態(騒音なら具体的数値など)を明らかにして改善を促すのが現実的な対処法になる。さらになんといっても、大家にとって悩ましく「相談事例が一番多い」(瀬戸弁護士)問題は、家賃滞納だ。