2018年2月の年金支給日、パニックが広がった。約130万人もの受給者の年金額が2か月前より大きく減っていたからだ。
年金受給者が毎年、年金機構に提出する「扶養親族等申告書」の書式がマイナンバー制度の導入で変更され、記入ミスや書き方がわからずに期限までに提出しなかった人が続出し、年金から本来より多くの税金を天引きされて年金振込額が減ったのだ。
とくに従来の申告書では扶養する配偶者が「あり」か「なし」かの欄をチェックするだけでよかったのに、新たに配偶者の「所得」を記入しなければならなくなったことが混乱を招いた。政府の年金記録回復委員会委員を務めた社会保険労務士の稲毛由佳氏がいう。
「配偶者の所得は収入から各控除などを差し引いた金額で、妻の収入が基礎年金(国民年金)しかなければ所得はゼロと書く。それを収入の金額を書き込んでしまった人が少なくありませんでした。
この扶養親族等申告書が未提出だったり、記入ミスがあると、夫の配偶者控除が削減・縮小され、所得税率が上がってしまう。夫の年金の月額が16万円で社会保険料が2万円(配偶者有)の場合、扶養親族等申告書を提出すれば、天引きされる所得税は127円で済むのに、提出しなかったことで所得税が1万720円にまで跳ね上がってしまったケースもある」