日本で働く外国人も増えてきたが、飲食店では「なり手がいないから」などと雇う例も多いという。その一方で、「敢えて」ホールスタッフに中国人だけを雇う居酒屋があった。その店の常連であるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、同店の充実のサービスと経営者の意図について解説する。
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東京・渋谷のその居酒屋・Aにはこの21年ほど通い続けていますが、当時から中国人女性の張さん(仮)という店員がいました。今は店に立つことはそれ程多くはないものの、時々来てはテキパキとした動きを見せます。調理人は全員日本人ですが、現在、同店には少なくとも6人の中国人店員がいます。全員がとにかく優秀です。
日本語が若干たどたどしい人はいるものの、注文の間違えはほぼないし、60人ほどの客が入る店で注文が滞ることはほとんどありません。ベテラン店員が店の奥から常に目配せをし、他の2人が適切な動きをし、客の注文を次々と取っていく。居酒屋客の定番の動きである「口に両手を当てて『すいませーん』と何度も言う」はあまり見られず、手をサッと挙げるだけで気付いてくれます。
不思議と張さんのイズムというか、姿勢が各店員にも伝わっており、「余計なことは言わない」「テキパキ動く」「従業員同士は無駄口を叩かない」といった点が共通しています。同店の経営者と喋る機会も時々あるのですが、彼はこう言います。
「中国人はいいわ。彼女らはとにかく真面目で、文句を言わない。この店は何十年もやってきたが、途中から私は中国人しか雇わなくなった。何しろ彼らはわざわざ海外からやってきて、生活の基盤を作ろうと必死だから真面目に働いてくれる。軽い気持ちのバイトというよりは、本気でこの仕事に取り組んでくれるからいいんだ。張もずっとやってくれているし、彼女はいい中国人を毎度紹介してくれて助かっている」