人生のなかで、医師が「ご臨終です」と告げる瞬間に立ち会うことは何度かある。大切な家族を失う悲しみは耐えがたいものだが、現実は涙に暮れる時間を与えてはくれない。神奈川県在住の主婦、岸谷紀子さん(仮名・48才)はこう振り返る。
「母が亡くなってから、親族への死亡の連絡や葬儀業者との打ち合わせなど、やらなければならないことが山積みで、息つく暇もありませんでした。でも、本当に大変だったのは葬儀が終わってから。
入院費や葬儀費用を立て替えていたので、後日、母の口座からお金を引き出そうと通帳と印鑑を探したのですが、見当たらない。家中探して、使っていないたんすの奥で発見。用心深い母親だったので、見つけるのに苦労しました。
でも、今度は暗証番号がわからず、銀行に問い合わせたらそのまま口座が凍結されてしまって…。凍結解除のために、遠方に住む親族の戸籍謄本など揃えるのに数か月かかり、本当に大変でした」
これはよくある風景だが、実は序の口。親や夫が生前使っていたメインの銀行口座など、わかりやすい財産なら所在が不明になることは少ないが、あらゆるものがインターネットで管理されるこの時代、家族が知らないネットの銀行口座や証券会社に置いてある財産を見つけるのは簡単ではない。ログインIDやパスワードを見つけ出すのは、さらに雲を掴むような話だ。
それだけでなく、Suicaなどの電子マネーや航空会社のマイレージ、Tカードのポイントや仮想通貨など、本人の死後にすべてを把握するのは至難の業。だが、探すのを諦めてしまえば、せっかくの親や夫の財産は永久にもらえなくなる。
認知症を発症して忘れてしまう前に、また生きているうちに、死後見落としそうな財産を確認しておくことが大切だ。
※女性セブン2019年2月7日号