近年、外国人観光客の急増に伴って、国内のホテルでは外国人の宿泊者の受け入れ態勢を強化している。様々な文化的背景を持った人たちが数多く訪れるようになれば、自然と“小さなトラブル”は増えがちだ。代々、有名ホテルを経営している家に生まれ、小さい頃から多くのホテルを見てきた女子大生コラムニスト・小林千花氏がリポートする。
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複数のホテル関係者に聞くと、外国人観光客の増加に伴って、困ってしまうゲストに遭遇するケースが増えているという。
東京都内のある高級ホテルでは、近年、外国人観光客が急増した。高級ホテルだけに紳士的な客が多いが、時に“クレーマー”かと思うようなケースもあるそうだ。
ある日、アメリカ人のビジネスマンが同ホテルに宿泊した。チェックインした後、「部屋がホコリっぽい。マネージャーを部屋に呼んでくれ」とフロントに電話がかかってきたという。慌てて客室係が部屋に行きホコリをチェック。大したホコリは見当たらなかったがルームチェンジの準備をし、ワンランク上の部屋にアップグレードした。その時にお菓子も一緒に届けたそうだ。
日本人だったらアップグレードするとだいたい収まるというが、国が違えば求めるものが違う。その客は「お菓子だけか。ポイントをくれ」と約3万円分のポイントを要求してきたそうだ。ポイントといっても、ホテル内ではお金と同じように食事などに利用できるものだ。このホテルに宿泊する外国人客は、何か部屋に不具合があるとポイントを要求するケースが少なくないという。
結局ホテル側は要求を受け入れ、チェックアウト時に約3万円分のポイントを加算したという。ホテル関係者は「部屋を変えてアップグレードしたうえでポイントを要求する人は、高級ホテルに泊まるような日本人にはいないですね……」と漏らしていた。
首都圏にある、別の高級ホテルのエピソードも紹介しよう。このホテルは全部屋禁煙となっているため、小さい子供のいる家族連れに人気だという。
ある日、中国人観光客の家族が宿泊した。チェックイン時に胸のポケットに明らかな膨らみが見え、タバコを持っていると察知したフロントのホテルマンは、そのお客様に全室禁煙の旨を伝え、「タバコを吸ったら清掃料がかかります」と説明し、同意書にサインをもらったそうだ。