年金の受給開始年齢は原則65才だが、実は一部の世代にだけは、「60~65才」の間に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」という制度がある。1994年に、年金の受給開始年齢が60才から65才に引き上げられた際、それまで「60才から年金をもらえる」と思って老後の将来設計をしていた人は急には対応できないため、影響を小さくするために設けられた特別な制度だ。
都内の金融機関に勤める鈴木さん(59才)が話す。
「夫が65才になったので、年金の受給手続きのために年金事務所に行きました。手続きしていると、窓口の人が『61才から受け取れる特別支給を受け取っていませんよ』と教えてくれました。その金額を見てびっくり。480万円も一括で受け取れると言うのです。
家に帰り、今度は私の『ねんきん定期便』もよくよく見返したら、『特別支給の厚生老齢年金』の欄に480万円近い金額が書いてあり、61才から受け取れることがわかりました。年金は65才から受け取るものと思い込んでいたので、このまま知らずに受け取っていなかったらと思うと、考えただけでゾッとします」
鈴木さんのような勘違いをしている人は多い。ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さんが話す。
「特別支給と65才から受け取る年金は全くの別物です。また、特別支給を受け取ると、『繰り上げ受給』(年金を早く受け取る代わりに年金が減額される制度)と勘違いして、あえて申請しない人もいますが、大きな間違いです。特別支給を受け取っても、65才からの年金額は減りません。特別支給は、通常の年金とは切り離して考えるため、該当する年にもらわないと損です。特別支給の受給開始年齢の3か月前に年金請求書が届くので、必ず返送しましょう」