近年、少年野球に関して、子供たちを取り巻く環境に様々な問題提起がされている。体ができていないにもかかわらず、長くハードな練習や過密な試合日程を強いられた結果、故障して野球から離れてしまう選手もいるし、“勝利至上主義”の蔓延で野球の楽しさがいつの間にか失われてしまっているチームもあり、子供たちの指導方法がどうあるべきか、議論を呼んでいる。
問題は指導方法だけではない。選手である子供たち自身や、監督・コーチ、保護者たちの人間関係がうまくいかなければ、チームが崩壊してしまうこともある。ここで紹介する関東のある少年野球チームでは、運動神経抜群の少年が出現したことにより、チームがガタガタになってしまったという。
舞台になったのは、創立50年近くの歴史ある少年野球チームだ。そのチームは1~3年生の下級生チームと、4~6年生の上級生チームに分かれており、事件が起きたのは上級生チーム。同チームのヘッドコーチだったHさんが語る。
「ウチのチームはずっと、勝つのは3回に1回ぐらいという弱小チームでしたが、昨年の春に状況が一変しました。A君という新4年生の子がチームに入ったのですが、彼はすでに身長が160cm近くあり、投げても打っても走っても、その力はずば抜けていました」(Hさん。以下同)
小4で160cmとかなり大きめなA君は、上級生を押しのけて“エースで4番”の座に収まり、チームの勝率は飛躍的に上がった。ただ、ある時期を境に、ちょっと様子が変わり始めた。