定年後の生活は、とにかくお金が心配の種になるが、“引き算”の発想で豊かにする方法がある。それこそが「攻めの解約術」である。
「現役時代に複数あった銀行口座を解約し、手数料面でのメリットが大きいネット銀行に預金をまとめるのもいいでしょう」
ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏はそう指摘する。サラリーマン時代は、勤め先のある都心部に支店やATMが充実して配される都市銀行の利便性が高いと考える人が多いが、定年後は生活スタイルが変わる。「自宅近くにあるコンビニATMがいちばん便利」となるケースも少なくない。
「預金利息が雀の涙ほどしかないなか、コンビニATMで3メガバンクなどの口座から時間外に預金を引き出せば、それだけで216円の手数料がかかる。
その点、実店舗を置かないことでコストを圧縮しているネット銀行のほうが有利。たとえばイオン銀行では、『コンビニATMの引き出し・振り込みが最大月5回まで無料』といったサービスが設定されています」(同前)
たとえ1回216円の手数料でも、月に5回で1000円。年間1万2000円と決して馬鹿にできない。
加えて、丸山氏が「複数ある口座を解約して、一つにまとめるとよい」とするのは、家計の収支を一つにまとめて管理したほうがわかりやすいことに加え、メガバンクを中心に、「口座維持手数料」の導入が議論されているからだ。海外ではすでに導入している国もあり、たとえばフランスでは口座の維持に年間18.5ユーロ(約2300円)の手数料がかかる。
「口座が複数あると、それだけでお金がどんどん消えていく状態になる可能性があるわけです。それを見越して、今から口座を整理しておくのが賢い考え方でしょう」(同前)
仮にフランスと同水準の口座維持手数料が導入された場合、口座を4つ持っているとそれだけで年間1万円近くが消えていく計算になるのだ。
ただし、定年後の銀行口座をネット銀行の1口座に絞る場合、「年金の受取口座にできるか」を注意したい。現在、年金の受取口座として指定できるネット銀行は、ソニー銀行、楽天銀行、住信SBIネット銀行、イオン銀行の4行だ。
※週刊ポスト2019年4月12日号