昭和までの日本社会は、『資本家階級』、『中間階級』、『労働者階級』の3つに分かれると考えられてきた。しかし近年は、労働者階級の内部に巨大な裂け目ができ、極端に生活水準の低い非正規労働者の新しい下層階級=『アンダークラス』が誕生している。
アンダークラスの数はおよそ930万人に上り、就業人口の14.9%を占め、社会の一大勢力になりつつある。平均年収は186万円で、貧困率は38.7%と高く、特に女性の貧困率はほぼ50%に達しているという。
金持ちの子はより金持ちになり、貧乏人の子はより貧乏人に、そして貧困家庭に生まれた子はアンダークラスに落ちてしまう。「貧困の連鎖」は止められないのが、今の日本の社会構造だ。親から子供へ、世代を超えて「階級の固定化」が深刻な問題となっている。
そして、いくら真面目に働いても、一度アンダークラスに落ちると、そこから抜け出すことは容易ではない。「努力は報われない」のだ。『アンダークラス』(ちくま新書)の著者で、社会学者の橋本健二さん(早稲田大学人間科学学術院教授)が分析する。
「日本の企業、特に大企業が中途退職者や非正規労働経験者を採用したがらない傾向も、アンダークラスから抜け出せなくしている。また、企業は新卒者には教育をしますが、中途採用や非正規の人には教育をしません。だから、いつまでたっても能力がつかず、抜け出せないのです」
中央大学文学部教授の山田昌弘さんは、女性ほど貧困に陥るリスクが高まりやすいと指摘する。
「せっかく正規で働いていても、女性は子育てのために一度辞めざるを得ない人がほとんど。産休、育児休暇などの制度はありますが、日本企業の傾向として、一度退職したり非正規雇用になると、大企業には戻りにくい。そのため、もともと貧困層の人だけでなく、中間層にいる人もアンダークラスに陥る可能性は大いにあります。特にアラフォー世代でその傾向は高い」