昨年夏に全米で封切られ、3週連続映画興行成績1位となった映画『クレイジー・リッチ!』。ラブコメディとして人気を集めた作品だが、この映画の勘所はシンガポールに住む富豪の華僑の生活ぶりであり、その後継問題だった。
華僑の富豪たちがどのようにして築き上げた財産を守り、後継者に伝えていくか、そのシステムに並々ならぬ視線を送っていた日本の経営者がいた。ユニクロ創業者にしてファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏である。
昭和24年、山口県宇部市で開業したちっぽけな洋品店「メンズショップ小郡商事」は商号を「ユニクロ」と変え、これを経営する「ファーストリテイリング」は今や国内外に店舗を展開するグローバル企業となった。株式の時価総額約6兆6000億円はホンダ、日本郵政を凌ぐまでになっている。
柳井氏は何度となく世襲を否定してきたものの、ここにきて2人いる息子のどちらかが継ぐのではないかという声が社内では専らだ。
昨年夏、連結決算の記者会見に臨んだ柳井氏は、さらなる海外展開に強い意欲を見せた。と、同時に発表されたのが長男の一海氏、次男の康治氏を取締役に充てる人事だった。