「いつまでも健康でいたい」と考えて定年後もスポーツに勤しむのはいいが、高齢者の運動には注意すべき点も多い。たとえば高齢になってからランニングを始めるのは考えものだ。筑波大学名誉教授の田中喜代次氏が語る。
「加齢とともに心肺停止や脱水症状を引き起こすリスクが高くなる。男性の場合、50代後半から骨密度や筋肉量が目立って低下し始めるので、転倒による骨折の危険性もグッと高まります」
市民マラソン大会では、他の年代に比べて60代の心肺停止発生率が最も高いという調査結果もある。それだけではない。
「ランニングを続けていると、特に高齢者の場合は心臓の筋肉が伸びて拡張する、いわゆる『スポーツ心臓』になってしまうことがあります。心臓が拡張すると、リラックスして休んでいる時の脈が著しく遅くなり、不整脈が出ることもある。寝ている時に心臓が止まりやすくなるため、ペースメーカーが必要になる場合もあるのです。
対してウォーキングや水中歩行は心臓に過度の負担がかかる複雑な動きはさほどないので、高齢者でも比較的安心して実践できる健康運動です」(同前)
健康で長生きしたいなら、無理な運動は控えたほうが賢明のようだ。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号