追加関税率の引き上げに、3000億ドル相当の輸入品に対する新たな課税措置。5月に入りトランプ大統領の対中政策は厳しさを増しているが、そこに新たな企業攻撃が加わった。
トランプ大統領は15日、情報通信技術サービスのサプライチェーンの安全を確保するために、アメリカ企業に対して脅威があるとみられる通信機器の使用を禁じる大統領令に署名した。
アメリカ商務省は16日、華為技術(ファーウェイ)が制裁対象であるイランとの間で金融取引を行ったとして、華為技術と68の関連会社に対して、アメリカ企業が政府の許可なく製品を輸出することを禁じるリストに登録した。
中国を代表する通信機器メーカーで、世界トップクラスの5G技術を有する華為技術に対して、アメリカはピンポイントで攻撃を仕掛けているが、中国政府はアメリカの強硬策に対して、折れる姿勢を見せない。
それでは、もう一歩進んで、中国政府がアメリカに反撃する可能性はないだろうか。アメリカ国債を売却するのではないか、人民元安を黙認するのではないか、レアアースのアメリカへの輸出を禁止するのではないか、中国消費市場からアメリカ企業を締め出すのではないか……。
もし、そのようなことが起これば、金融市場が混乱するのは必至であるが、現状で中国側の対応は冷静で、控え目なものとなっている。どうして中国はアメリカに反撃しないのだろうか。
追加関税率の引き上げ、新たな課税対象の拡大については、アメリカに対する悪影響も大きい。前者については数週間以内に悪影響が出そうではあるが、影響のより大きい後者については、公聴会を開く必要がありそうなので、実施されるまでに3か月程度の準備期間が必要となる。トランプ大統領は交渉術の一つとして厳しい要求を突き付けており、中国側の態度次第では、延期される可能性があるだろう。6月中旬に予定されている大阪で行われるG20サミット会議において、米中首脳会談が行われ、急転直下、合意がなされる可能性がある。現時点ではまだ、交渉の余地があるので、制裁を急ぐことはない。