厚生労働省は5年ごとに年金の「財政検証」を行なう。100年先までの保険料収入と給付の見通しを試算、制度を点検し、新たな改革を追加することを目的とする。財政検証では毎回、具体的な改革の方向に沿った複数の「オプション試算」が示される。
今年の財政検証は「年金受給開始年齢引き上げ」や「厚生年金の適用拡大」などいくつかのケースで将来の年金財政の見通しが示されると予測される。
その中で、年金が割り増しされる繰り下げ受給の上限を現行の70歳から「75歳」へと引き上げることが検討されている。受給を10年我慢し75歳繰り下げにすれば、割増率は84%になる計算だが、そううまくはいかない。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの北山茂治氏がいう。
「政府が検討している75歳選択受給は自分の寿命を賭けさせる“年金ギャンブル”のような制度です。確かに毎月の年金額面は2倍近くに増える。だが、その分、天引きされる税金や保険料も大きくなる。そのうえ、繰り下げ期間は年金の扶養手当にあたる加給年金がもらえません」
加給年金は年下の妻が65歳になるまで夫の年金に年間約39万円が加算される。妻との年齢差10歳の夫が75歳繰り下げを選ぶと、10年分の加給年金約390万円を捨てることになる。
※週刊ポスト2019年6月28日号