これまでアベノミクスの恩恵を受け、2020年の東京五輪に向けて東京都心を中心に盛り上がりが期待される不動産市場。だが実際は、都心においても不動産バブル崩壊の兆しが出始めているようだ。都内の不動産業者が語る。
「不動産市場では都市と地方の二極化が進み、なかでも都心部の限られたエリアだけが活況を呈しているといわれますが、実はその都心部でもすでに在庫が前年の倍近くまで膨らみ、供給過多となっています。
たとえば不動産業者向けの不動産情報を見ると、最も需要が多いとされてきた都心3区(千代田区・中央区・港区)の中古マンションの在庫件数は、昨年5月から右肩上がりで増え始め、今年に入ってからは前年同月比80%超と大きく積み上がっています」
それだけではない。不動産経済研究所のまとめた「首都圏のマンション市場動向」を見ても、新築物件の契約率は昨年9月以降、好調とされる目安の70%を割り込む状況が相次いでいる。今年1月には60%割れまで落ち込み、2月は70%超となったものの、3月は67.6%と再び70%割れに沈んでいるのだ。
「これは2008年のリーマン・ショック以来という最悪の水準です。ほかにも某住宅メーカーの現時点での販売用不動産の保有金額を見ると、1年前の3倍以上に膨らんでいます。これは明らかに供給過多といえるような状況です。これらのデータを見る限り、人気の高い都心部でさえも物件が売れずに在庫が積み上がっていることは明白。不動産バブルが一気に崩壊する恐れもあります」(前出・不動産業者)
振り返れば、1990年代初めのバブル崩壊は不動産バブルの崩壊が引き金を弾いたとされている。ただでさえアベノミクスの息切れが指摘されるなか、不動産市場の変調のサインは注意深く見守る必要があるかもしれない。