10月1日に消費税率が8%から10%へと引き上げられる。1989年4月に消費税が導入されて以降、税率の引き上げは3回目。今回の増税の最大の特徴は、過去にはなかった2つの新しい制度がスタートする点で、1つは「キャッシュレス・消費者還元事業」、2つめは「軽減税率制度」だ。
1つめの「キャッシュレス・消費者還元事業」は、「買い物の代金をキャッシュレスで支払うとポイントが還元される」というもの。クレジットカードや電子マネー、あるいはスマホを活用したQRコード決済を使えば、最大で買い物代金の5%分のポイントが還元される。比較的わかりやすい制度であるため、増税後の個人消費の落ち込みを防ぐとともに、キャッシャレス決済を普及させることに関して、一定の効果があると考えられている。
2つめの「軽減税率制度」は「食品と新聞(*週2回以上発行の定期購読物)の消費税率を8%に据え置く」という制度で、日常生活に不可欠なものについては増税の対象にしないという、家計の負担を軽減する措置だ。新聞が日常生活に欠かせないものかどうかは賛否が分かれているものの、一見、こちらもシンプルな制度のような印象を受ける。
しかし、食品の軽減税率については、例外とするルールが多岐にわたり、実際の運用面ではさまざまな混乱が予想されている。まず、酒類や外食、医薬品(医薬部外品を含む)などは、軽減税率の対象外となる。店頭で購入して持ち帰るテイクアウトの食品については軽減税率8%が適用されるが、販売した店舗が用意しているスペースで飲食をすると対象外となり、10%が適用されてしまう。したがって、ファストフード店でよく見られる、テイクアウトと店内での飲食の両方が可能なタイプの店舗では、原則、同じメニューであっても消費税率が変わることになる。
また、ペットボトルなどに入ったミネラルウォーターは軽減税率の対象となるが、水道水は洗濯や掃除などにも使われるという理由から対象外。つまり、水道料金の税率は10%に引き上げられるというわけだ。
このように、どんな食品が軽減税率の対象となるかの線引きは、結構厄介な問題だ。特に、販売する側にとっては大きな負担となる。テイクアウトと店内飲食の両方が利用可能な店舗は、販売時にどちらを利用するのか、顧客に確認する必要が出てくる。
食品から日用品まで数多くの商品を取り扱っている店舗でも、大きな影響が予想される。税率別に売り上げを管理しなければならないからだ。さらに、食品の売り上げがなくても、仕入れがある店舗は取引ごとに税率を区分して記録する必要がある。国税庁は、売り上げや仕入れを記載する帳簿には、税率を区分して記載することを義務付けている。このように、消費税増税はあらゆる事業者に新たな負担を強いるのである。
混在する税率の税込額、税抜額、税額をワンタッチで切り替え
そうした事業者の負担を減らすツールとして注目されているのが、カシオの『軽減税率電卓』だ。10%と8%それぞれの税率キーが搭載されており、このキーを使うことで、10%と8%の税率が混在する計算でも、スムーズに行うことができる。
記者が実際に使ってみると、たしかに操作がわかりやすい。税率10%の商品【1】の価格を入力して「税込1」のキーを押せば、10%の消費税を含む価格が表示される。次に8%の商品【2】の価格を入力して「税込2」のキーを押せば、8%の消費税込みの価格が表示される。商品ごとに、別々に計算をする必要がない。
続けてカシオ独自の「税計算合計」キーを押すと、【1】と【2】の税込額の合計が表示され、もう一度「税計算合計」キーを押すと、今度は【1】と【2】の税抜額の合計が表示される。さらに、もう一度押すと【1】と【2】の税額の合計が表示されるようになっている。
つまり、10%と8%の税率が多数混在する計算でも、最初に10%の商品だけの計算を行ってから、次に8%の計算をする、といった手間がかからないことになる。しかも、いったん入力をしてしまえば、「税計算合計キー」によって、税込額と税抜額、税額のそれぞれの合計をワンタッチで切り替え表示することができるのだ。
さらに、10%のものだけを計算したい場合は「税込1」のキーを使う。押すと10%分の税込額の合計、もう1回押すと10%分の税抜額の合計、もう1回押すと10%分の税抜額の合計が表示される(8%のものは同様に「税込2」のキーを押す)。この機能は、仕入れや経費などの請求書を作成するときに便利だ。仕入れや経費の請求書は、税率ごとに請求額を記載することになっているためだ。
【計算例】お酒(税抜1000円)1本とジュース(税抜150円)1本と雑誌(税抜620円)1冊の税込額、税抜額、税額の合計額は?
カシオの『軽減税率電卓』の機能は、軽減税率の対象商品を取り扱う小売店や卸売業者、テイクアウトに対応した飲食店に加え、確定申告の際に経費の計算が必要になる個人事業主などのニーズを十分に満たしている。
冒頭で紹介した「キャッシュレス・消費者還元事業」は、中小規模の小売店や飲食店を、還元率の上限である5%ポイント還元の対象としている。消費税増税は中小規模の店舗にとっては、新たな顧客をつかむチャンスともいえる。『軽減税率電卓』は、そのチャンスをしっかりとつかむための強い味方になってくれるだろう。