イギリスのEU(欧州連合)離脱(ブレグジット)問題の余波でポンド相場の変動が大きくなっている。はたして今後のポンド相場はどう推移するのだろうか。ポンド相場の行方とトレードの注意点に関して、FX(外国為替証拠金取引)のカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが解説する。
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10月10日からポンド円が2日間で1ポンド=5円以上急騰する局面があり、ポンドの勢いを久しぶりに確認できました。ポンドは売りのポジション(ショートポジション)が多く積み重なっていたので、そのショートポジションの決済が、上昇値幅を大きくした要因でしょう。
今回のポンド急騰を解説する前に、ポンド円などの「クロス円通貨ペア」の価格に関する基礎的な知識を解説します。クロス円通貨は、ドル円と対象通貨の米ドルレートを掛け合わせて作られます。例えば、ポンド円価格は、ドル円とポンドドルのレートを掛けて算出された数値です。クロス円通貨は、合成元の2つの通貨ペアの変動が影響するため、トレーダーの方は、ドル円と対象通貨の米ドルレートもあわせてチェックしておくとよいでしょう。
さてポンド円が急騰した背景について見ていきます。イギリスのブレグジットの期限が10月末と迫るなか、10日にボリス・ジョンソン首相とアイルランドのレオ・バラッカー首相が会談しました。アイルランドの国境や貿易問題について協議が行われ、会談はイギリスEU離脱を前進させる内容でした。これを受け、ポンド円のショートポジションが一気に巻き戻され(決済され)ます。
ショートポジションの決済は、売りとは逆の「買い取引」が行われることなので、ショートポジションが急速に決済されていくと、その分、買い取引が増え、上昇を引き起こします。これがポンド急騰の原因です。こうしたポジション動向は、相場の値動きに大きく影響を与えます。
合意に向けて明るいニュースがさらに出てくる場合、ポンド円の上値はまだ伸びる可能性があります。しかしポンド円相場のショートポジションの偏りが解消されれば、上昇の勢いが継続するかは不透明です。
私がトレードする場合、ここからのポンド円は、チャート分析をメインに取引判断を行います。また、ポンド円は変動幅も大きいのでリスク管理もいつも以上に徹底します。ニュースで一気一憂していると、リスク管理にも悪い影響を及ぼします。メンタルコントロールがしっかりできない人は、今のポンド相場でのトレードは控えるという選択肢もあるでしょう。投資で勝つ秘訣は冷静な取引に徹することです。長期的に利益を残すためには、淡々と地道なことを続けられるかどうかにかかっています。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)