2015年の外国為替市場における最大の注目は、アメリカの利上げがいつ行なわれるのかだろう。為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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アメリカの利上げが秒読みの段階に入っている。9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げの実施が決まる公算が大きく、私も利上げの開始は9月と考えている。アメリカの利上げの動きを背景に、今年後半の外国為替市場のメインテーマは「米ドル高」になるだろう。
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は「年内の利上げが適切」との認識を示しているが、具体的な開始時期は現段階では明言していない。私がなぜ9月開始と予測するかというと、経済が回復してきていること以上に、イエレン議長の利上げに踏み切る本来の目的が「金融政策の正常化」だからである。
アメリカが緊急避難的に実施した特別な低金利策は、歴史的にも「禁じ手」だ。これを本来あるべき姿に戻す必要がある。利上げのスタンスを強めているイエレン議長の本音は、「早く正常に戻したい」だろう。「金融政策の正常化」が目的であるならば、9月に利上げを開始し、経済指標が許せば、12月にも再利上げを実施する可能性が高い。12月に続けて利上げしないとしても、比較的早い段階で再び利上げすると思われる。
出口戦略としての金融政策の正常化には、FF金利 (フェデラル・ファンド金利)は少なくとも1.25%必要だろう。もしまた何か非常事態が発生した時、この水準ならば利下げが可能になり、効果も出る。今回の正常化のターゲットは2%と思われ、できれば1.25%以上の水準にしておきたいというのが、バーナンキ前議長から出口戦略のバトンを引き継いだイエレン議長の思惑ではないか。
1回の利上げ幅は0.25%と予想される。回復基調の景気を腰折れさせないように、徐々に持続的に金利を上げていくと思われる。
経済の状況にもよるが、その利上げのスタンスを示す意味でも9月、12月、3月と連続して利上げを行なって3回連続で0.25%ずつ上げると、1.00%に届く。この水準まで順調に引き上げてくれば、目標値に向けて軌道に乗ったと判断できる。それだけ金利が動けば、為替相場はドル高方向により力強く進むだろう。
一方、不安定な中国株の世界経済への影響、弱くなっている新興国通貨などを理由に、「アメリカは利上げ時期を考慮するのではないか」との意見も聞かれる。9月の利上げを見送る可能性もあるが、仮に見送ったとしても決してそういう根拠ではない。歴史的にみても、アメリカの金融政策はアメリカだけをみている。他国の状況に配慮して自国の金融政策を決めることはないのだ。
※マネーポスト2015年秋号