日本人の2人に1人がかかるといわれ、死因としては最も多い「がん」。その治療には多額の費用がかかることもあるからこそ、“もしも”に備えて「がん保険」に加入している人は少なくない。だが、いざという時に、その備えが全く役に立たないことがある。
がんライフアドバイザー協会代表理事の川崎由華氏が相談を受けた、肺腺がんに罹患した50代後半女性の例だ。
この女性はがん保険に加入した際、放射線治療などによる通院で日額1万円が給付される「特定治療通院」特約もつけた。
女性は飲み薬の抗がん剤での通院治療を選択。ところが、「特定治療通院」の適用外とされ、受け取れたのは診断一時金の10万円のみだった。
「契約していた特約は放射線、抗がん剤、ホルモン治療が対象だったが、飲み薬は対象外。最近は抗がん剤でも飲み薬が増えているので注意が必要です」(川崎氏)
昨年、膀胱がんで入院した55歳男性もこう憤る。
「保険代理店の営業から『抗がん剤治療にも支払われる特約がある』と聞いていたので抗がん剤治療にしたが、退院後、保険会社に請求したところ、『使用した薬剤が適用外』といわれました。どの薬剤が適用外なのか聞いても『詳細はお答えできません』の一点張り。医師の処方に任せて自分で選んだわけでもないのに、一方的に断わられて、泣き寝入りするしかないのがどうにも悔しい」
前出・川崎氏の見方だ。
「抗がん剤特約なら治療1回につき5万円や10万円など保障が出るケースは多いですが、使用される薬剤には各社の規定があります。厚労省が認めていない自由診療にあたる抗がん剤や、抗がん剤だと思っていたらホルモン剤だったという場合などは適用外となるので約款を注意深く読む必要があります」
※週刊ポスト2020年3月13日号