7月15日に、無料通信通話アプリ『LINE』を運営するLINE株式会社が東京とニューヨークの証券取引所に上場する。LINEにとっては今回の上場は悲願でもあった。以前から上場の話は浮かんでは立ち消えになっていたのである。
「遅れた理由の1つとして、韓国IT大手である親会社ネイバーの存在が囁かれています。株式公開に伴う買収防衛策として、普通株の10倍程度の議決権を持つ『種類株式』を発行することにこだわったと伝えられています。
大株主が現われても議決権を奪われないための方策です。この動きに社内で反発する声もあり、上場が遅れたそうです。結局種類株式の発行は諦めましたが、それほどLINEを手放したくなかったのでしょう」(在韓ジャーナリスト)
公開する株式数にもそれが現われているというのはIPOジャパン編集長の西堀敬氏だ。
「今回は3500万株の公募となりますが、それでも3分の2程度の株はネイバーの手元に残ることになります。買収の決議に対する拒否権をきっちり残して掌握するつもりなのでしょう」
また、2015年12月期決算で売上高が前年同期比39%増の1206億円に達しているものの、純損益で79億円の赤字を計上していることも発覚している。
非上場時にはわからなかった国民的アプリの運営会社の素顔が、上場を前に次々と明らかになってきた。不安を覚える日本人投資家もいるかもしれないが、西堀氏はこういう。
「大株主であるネイバーの業績が悪化して大量のLINE株を手放すようなことがあれば価格にも悪影響が考えられますが、日本での知名度は抜群。短期的には問題ないでしょう」
アプリを持つ人同士が対話できる仕組みのため、一度、多くの人に浸透してしまえば、違うアプリには変え難いところも強みだ。証券アナリストで、つばめ投資顧問代表の栫井(かこい)駿介氏がいう。
「今後も日本では大きなシェアを維持するはずで、投資家たちは、このIPOに期待しています。昔のNTT株のように『買ったら絶対に儲かる』とまではいえませんが、今年最大の注目株であることは間違いない」
上場セレモニーの鐘の音はどう鳴り響くか。
※週刊ポスト2016年7月1日号