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養老孟司氏「人間は“不要不急”の存在。それでも人生に意味がある」【#コロナとどう暮らす】

養老孟司さんが語る「ウィズ・コロナ」時代を生き抜く考え方とは

養老孟司さんが語る「ウィズ・コロナ」時代を生き抜く考え方とは

 新型コロナウイルスによって、世界中で多くの高齢者が亡くなっている。人生折り返し地点を過ぎ、やっと一息つけると思っていた高齢者にとって、先の見えない自粛生活で生きる指針を見失っている人もいるだろう。ウィズ・コロナを生き抜くにはどうすればよいのか。解剖学者の養老孟司さん(82才)が語る。

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 不安を感じない人とは一緒に虫捕りには行けない――コロナの影響で不安を感じる人が増えているといいますが、ぼくは平常時からこう言い続けていました。

 例えば、ジャングルに虫捕りに行ったとしましょう。どこで大蛇が出てくるかもわからないし、猛獣が出てこないとも限らない。不安があれば下調べや準備をするし、道を歩くときだって一歩一歩慎重になる。ところが不安がない人は、何も考えずに先へ先へと行ってしまう。こういう人と一緒に虫捕りには行けません。不安は決して悪いことではないのです。

 持病と同じように折り合いをつけ、なだめすかして付き合っていくしかない。

 老いるのも不安だし、死ぬのはもっと不安ですよね。ですが老化しない生物も、死なない生物も、自然界に存在しません。だからこそ、折り合いをつけるしかないのです。そしてそれを「成熟」というのです。

 ではなぜ、人は老いや死を不安視し、成熟することができないのでしょうか。ひとつには、いまの日本社会全体が経済的利益を生み出すことに価値を置きすぎてしまったことが挙げられます。

“勤労=お金”という特定の価値から見ると、老いていくごとに価値がなくなっていくわけです。いわば、ぼくを含めた高齢者は、日本社会にとって、不要不急の存在になってしまったのです。

 昔は穀潰しという言葉もありましたが、価値を生まないのに無駄に食べ物だけは食べるという、まるで老人を山に棄てに行く『楢山節考』の世界です。

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