東京証券取引所によると、2016年1~6月に国内取引所で売買されたETF(上場投資信託)の代金は、約6.2兆円におよび、前年同期比で約22%の伸びとなった。2016年6月末時点で国内に上場しているETFは200本を超え、全世界で約6000本におよぶ。
ETFは主として指数に連動するよう設計されており、市場全体に投資ができる容易さから、機関投資家から個人投資家に至るまでニーズの高まりを見せている。
ETFは「運用コストの低さ」ばかりが着目されがちだが、安易な銘柄選びのもと運用を始めると、痛い目を見る可能性もある。
では、ETF銘柄をどう見極めればよいのか。米国初のETFを生み出したステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの日本法人で、ETFのマーケティングを担当している杉原正記氏が解説する。
「ETFの銘柄を選ぶ際には、もちろん投資対象の特徴や運用にかかるコスト(信託報酬)を把握することも重要ですが、連動する指数の動きとETF基準価額の動きのずれを示す『トラッキングエラー』にも注目することが大切です」(以下、「」内同)
このトラッキングエラーが大きければ大きいほど、狙い通りのリターンを得ることは難しくなる。トラッキングエラーを抑制するには運用の巧拙も問われるため、銘柄や運用会社の実績にも目をむけたい。例えば、同社が提供しているSPDR S&P500 ETF(銘柄コード:SPY)の場合、実際に現物の株式を保有して運用することで、連動指数のS&P500とほぼ同じ値動きをするよう努めているといい、同様の運用をしているETFであれば、比較的トラッキングエラーは少なくなるだろう。
「取引高や資産残高も重要な要素です。保有しているETFを売却しようとした際に、取引高が少ないと買い手が付かずに基準価額と市場価格との乖離が発生し、目標の価格で売却できないこともあります。また目先のリターンが好調に見える場合でも、極端に残高が少ない銘柄については、とくに長期投資のためのベース資産には向かないかも知れません」
経済危機などで大きく値を下げるような事態が起きると、大幅な資金流出も考えられるため、最悪の場合には、残高の減少により上場廃止などもあり得る。長期で安定的に保有するためには、一定の資産残高がある方が無難だろう。
さらに商品性が分かりやすいことも重要なポイントだという。どんな市場のどんな商品に投資しているのかが分かりづらいと、そもそもの投資目的に合っているかどうかが曖昧になる上、リスク要因を把握できず、損失が出た場合に我慢して保有し続けるべきか見切りをつけて売却をするべきかの判断もしづらいためだ。
投資先を考える際、つい目先の収益やかかるコストばかりに注目しがちだが、安定的に長期投資をするためには、ETF自体の「質」も重要であることをいま一度考えたい。各銘柄の理解を深め、どう生かすかがETF投資の成功のカギとなるだろう。