相続トラブルが発生することが多いのが、土地に関する手続きだ。たとえば、相続の際に土地の名義が変更されておらず、相続権を継承している全員の戸籍謄本をたどって、誰が相続人なのか明らかにしなければならなくなるケースが多々ある。その場合、名義変更をするには相続人全員の同意が必要で、すぐに全員と連絡を取る必要がある。
借地権にも注意がいる。埼玉県在住の60代男性Aさんは、親が借地上に建物を所有するケースだ。
Aさんは同居する親の死後に備えて相続の準備を進めるが、地主と折り合いが悪く、親の死後、「同居する家族は借地権を相続できない。契約人が亡くなったから借地契約は無効だ」と宣告され、地主に追い出されることを怖れている。
「その心配は無用です」と言うのは、一般社団法人しあわせほうむネットワーク/司法書士法人リーガルサービス代表の野谷邦宏氏。
「土地を賃借する権利である借地権は、同居の有無にかかわらず相続でき、親の死後に地主が『相続人とは契約していない』と告げても、そこに法的根拠はありません。ただし、相続をしたのちに契約期間が満了した場合、地主は立ち退きを求めることができる可能性がある。特に相続人が居住しない場合は、立ち退きが合法となる可能性が高いので要注意です。これらは、建物を賃借する権利である借家権も同様です」
また、建物が老朽化した場合は特に注意したい。
「相続した建物が朽ち果てた場合、旧借地法の規定により借地権の消滅もあります。老朽化した建物を相続するなら、早いうちに売却することを勧めます」(同)
※週刊ポスト2020年9月11日号