来年4月に「70歳就業法」と呼ばれる改正高年齢者雇用安定法が施行され、社員が70歳まで働き続けることができる仕組みをつくる努力義務が事業主に課せられる。「60歳定年」の常識は崩れ、いつしか“定年崩壊”となってしまうのだ。
60歳以降も、時には70歳以降も働くのが当たり前の定年消滅時代が到来すると、「働き方の手続き」も変わる。
60歳以降に再雇用、再就職、退職のいずれの選択をしたとしても、60歳の時点で一度、退職金が支払われるのが一般的だ。一時金として受け取る場合の税制優遇として退職所得控除がある。勤続年数が長いほど非課税枠が大きくなり、大学卒業から60歳まで38年勤続の人であれば、2060万円までが非課税となる。社会保険労務士の稲毛由佳氏が解説する。
「退職所得控除の適用を受けるには、退職金が支払われる前に、勤務先に『退職所得の受給に関する申告書』を提出します。実際には会社のほうで手続きをしてくれることも多いのですが、この控除を使わないと収入金額から一律20.42%が源泉徴収されてしまうので、注意が必要です。手続きが漏れてしまった場合は、翌年に確定申告をして還付を受けましょう」
退職金を受け取った後に、再雇用で同じ会社に勤め続ける場合、給料は大きく下がることが多い。その補填となるのが高年齢雇用継続基本給付金だ。雇用保険に5年以上加入している人であれば、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満になった場合、この給付金が支給される(65歳まで。最大で新しい給与の15%分)。
「たとえば60歳時点で月収40万円の人が、再雇用で月収24万円になった場合、毎月3万6000円が支給されます。65歳までの5年間受け取り続ければ、総額で216万円となる。通常は勤務先の会社がハローワークに申請手続きをしますが、中小企業などでは申請漏れも起こりうるので注意しましょう」(同前)