入学、結婚、出産――おめでたいことには「ご祝儀」がつきもの。本来なら家族や親戚、友人などが集まる場で渡すことが多いが、コロナ禍ということも相まって、「振り込み」という選択肢も登場し始めている。こうした「ご祝儀のキャッシュレス化」を歓迎する人、そして反対する人たちのリアルな声を集めた。
メーカーに勤める30代の男性会社員・Aさんは、大学時代の友人から届いた結婚式の招待状と一緒に同封された“あるカード”に驚いた。
「新型コロナ対策でなるべく現金の受け渡しを避けるためという理由から、QRコードと口座番号の記載があって、ご祝儀をクレジットカード決済、または銀行振込できる仕組みでした。便利すぎて感動しました」(Aさん)
これまでは結婚式のたびに、ご祝儀袋と新札を用意していた。Aさんは、「ご祝儀袋なんてすぐゴミになるのに、もったいない。筆ペンで名前を書くのも手間。新札だって、用意するためにいちいち銀行に行かなくてはならないのは面倒」などと思っていただけに、大満足のようだ。Aさんは、「受け取る側にもメリットがある」と力説する。
「支払い後、その友人からLINEが来ました。友人いわく、出欠も入金状況もオンラインで把握できるので、芳名帳もいらないし、会場での現金授受がなく気が楽とのこと。高齢の招待客もいるので、招待状はまだいるけど、いらなくなる時代もきそうだよね、とのこと。お互い快適なら、もう『現金手渡し』という風習が廃れてほしいとさえ思いました」(Aさん)
新型コロナ対策だけではなく、人間関係の観点からも、ご祝儀の振り込みを望む声が出ているようだ。広告代理店に勤務する40代の女性会社員・Bさんだ。今春、姉の息子(甥)が大学に合格したため、お祝いの食事会を開催する連絡が両親から入ったが、あまり気乗りしなかったという。
「私は姉と兄がいて、兄は海外在住。私は一人暮らしで、実家まで電車で1時間半ほどのところに住んでいるので、何かにつけて呼び出されます。ただ、うちは、そもそも親戚との交流が希薄で……。今頃になって、両親が『親戚づきあいも大事』とか言い出しているのですが、正直、姉家族と今さら盛り上がるような話題もないし、甥っ子だって生まれて2回くらいしか会ったことのない叔母に会っても『あんた誰?』っていう感じでしょう。食事会は欠席し、入学祝いだけ振り込みたい」(Bさん)