読みたいと思って購入した本なのに、なかなか読まずに“積ん読”している人たちがいる。少しずつ読み進められればいいが、読み終えないうちに新たに本を買ってしまい、本は積み上がるばかり。なかには、コロナ禍の巣ごもりアイテムとして購入したにもかかわらず、解消する気がないという人も……。時間があるのに、なぜ消化できないのだろうか。当事者たちの声からその理由を探った。
IT企業で働く30代男性会社員・Aさんは、会社の最寄り駅にある大型書店に立ち寄るのが好きだった。
「本屋さんに行くと、なんだかんだ結構本を買ってしまいます。読んだら自分が変われそうな気がするんですよね。買った本は、物理的に目に見えるので、家に置いていても『あの本読んでいないから、読まなきゃ』という義務感がまだあったんですが……」(Aさん)
しかしコロナ禍になり、外出が制限されるなか、ネットで本を購入するようになると、“読もう”という意欲が薄れてきた。
「在宅勤務になると、書店に行く機会が激減。YouTubeや書評サイトを見たりして、面白そうだなと思った本をAmazonで購入するようになったんですが、買うと満足してしまうのか、届いても包装を開封すらしないことが多くなりました。書店で実際に手にとってから買う本とは、読もうという意欲に差が出るのかもしれません。今はAmazonのダンボールが積まれた状態です……」(Aさん)
PR業界で働く30代女性会社員・Bさんは、書店もAmazonも利用する。以前から“積ん読”気味だったため、コロナ禍の空き時間でそれらを消化できると思いきや、むしろ以前より読まなくなっているという。
「家にいる時間が増えたことで、意外にあれこれしたいことが増えました。整理整頓、動画視聴など、時間はいくらあっても足りない。動画視聴と読書、どちらを優先するかという話なんですけど、どうしても楽な動画視聴ばかりしてしまう。読んでも漫画ですね。しかも、本棚を整理していたら、“読んでも覚えていない”という本だらけなことに気づいてしまいました。覚えていないということは、読んだ意味がなかったのかと自己嫌悪に陥りました」(Bさん)
とはいえ、せっかく買った本を読まないままではもったいない。開き直ったBさんは、本を自宅のインテリアの一部として活用することにした。「ディスプレイスタンドを買ってきて、本の表紙が見えるように並べています。積んだままにしているよりも活かしている気がして、結構気に入っています」というが、「もう読む気がない本も多い」と苦笑する。