日本、米国、ドイツ、スウェーデンの高齢者を対象に実施した内閣府の国際比較調査で、「日本の高齢者の3割は友達がいない」との結果が明らかになった。4か国中で最大の割合で、日本の高齢者の3人に1人が社会的に孤立している状況に大きな衝撃が広がっている。
しかし、この状況は外国人から見ると少し違う景色に見えているようだ。
「日本人は、なぜそんなに孤独が好きなのですか?」
そう記者に問いかけてきたのは、異文化コミュニケーションアドバイザーの石野シャハランさん。イラン・テヘラン出身で2002年に来日したシャハランさんは、孤独を好む日本人に衝撃を受けたという。
「だってみんな仕事の後も休日もひとりで過ごすし、誰かと長電話をすることもない。食事や旅もひとりでする人も少なくないですよね。私の国でも孤独を感じる高齢者の問題はありますが、寂しいと思ったら積極的に誰かとつながろうとする。とにかく孤独が嫌いで常に誰かとしゃべっていたいので、私はイランにいる親戚や友達とテレビ電話をつないで2~3時間話をして、その途中にトイレを済ませることすらある。
日本出身の妻はカルチャーショックを受けて、『何をそんなにしゃべるのよ』と驚いていました(苦笑)。私から見ると、日本の高齢者はそりゃあ寂しいでしょうよ、という感じです」(シャハランさん)
コミュニケーションの問題や格差社会に詳しい評論家で著述家の真鍋厚さんは、日本人が抱える孤独の根源は明治時代の中央集権化にあると分析する。
「中央集権化が進んだ結果、昔からあった地域のコミュニティーが次第に希薄化し、気がつくと現代人にとって地域は“ただの居住地”になってしまった。隣人の素性も知らず、困ったことがあったら“お上”に訴え、住民がお互いに助け合うことはない。特に高齢になって、会社などの組織から切り離された人は孤独が深まります。
他方、外国は伝統的に地域がコミュニティーになっている場合が多い。南フランスのある街では、引っ越してきた人を地域の人が歓迎するパーティーを催し、住民全員と顔合わせをするそうです。引っ越してきた人があいさつまわりをする日本とは正反対です」(真鍋さん)