「バカとブスこそ、東大に行け!」──阿部寛演じる破天荒な弁護士・桜木建二のせりふである。落ちこぼれ高校生たちを東京大学に合格させるべく、熱血指導を繰り広げる『ドラゴン桜』(TBS系)がいま、熱い。
江戸幕府直轄の教学機関「昌平坂学問所」の流れをくみ、明治10(1877)年、日本初の近代的な大学として設立された東京大学。以来、日本一の大学として君臨してきた。もちろんいまでも、「東大出身」は一大ブランドだ。いったい東大生は、他大の学生たちと何が違うのだろうか。
『東大メンタル「ドラゴン桜」に学ぶ やりたくないことでも結果を出す技術』(日経BP)の著者で、東京大学経済学部4年生の西岡壱誠さんは、本当に優秀な東大生は「自分にできないこと」をよく知っていると話す。
「東大に入ってから、自分の中の“頭のいい人”の定義が変わりました。それまでは、画期的なノートの取り方をしているとか、たったひとりでゼロからアイディアを生み出せる人こそ、優秀だと思っていたんです。でも、東大で出会った優秀な友人たちに勉強法を聞いたら、みんな“全部他人のパクり(まね)だよ。勉強法のプロじゃないんだから、新しいやり方を自分でつくる意味なんてないよ”と言うんです」
優秀な学生ほど、自分の不得意な分野をよく理解して素直に受け入れ、ひとりでできないことは、それが得意な人に協力を仰ぐか、方法をまねているという。2年間の浪人を経て東大に合格した経験を持つ西岡さんは、ドラマ『ドラゴン桜』のいやみな秀才・藤井遼(鈴鹿央士)のモデルでもある。劇中では、成績トップのはずの藤井が試験で大幅に失点し、桜木から指摘される。
「お前の敗因はその性格の悪さだ。お前はたったひとりで勉強した。だが、お前の失点は誰かの助言さえあれば簡単に避けられたものばかりだ」と。西岡さんも、現役、一浪時代は「ひとりよがり」だったという。自分のやり方が正しいと思い込み、教員のアドバイスにも耳を傾けなかった。