コロナ禍になる前は、「一口ちょうだい」「一口食べる?」というやりとりもよくある光景で、コミュニケーションの面からはほほえましくも見える行為だった。それが今や、感染対策の観点から、なるべく避けるべき行為とされるようになった。これまでそうした行為をするのもされるのも苦手だった人たちからは、安堵の声が上がっている。
IT企業に勤務する30代男性・Aさんは、新型コロナウイルス感染拡大以降、リモートワーク中心の勤務体制になった。会食もなくなったことから「一口ちょうだい」が口癖の同僚に悩まされることがなくなったと胸をなでおろす。
「一緒にランチに行くと、絶対に『一口ちょうだい』と言って来る同僚がいました。ひどい時は先に箸やスプーンをこちらのお皿に突っ込んでから言ってくることも。さらに厄介だったのは、定食やセットメニューを頼む時に『僕はこれ頼むけど、このおかずも一口欲しいから、これ頼んで』とメニューの決定まで介入してくることでした」(Aさん)
リモートワークと出社が半々の勤務体制になってランチに行く機会も減ったが、それでも同僚の行為は止まらなかったという。
「昼食として買ってきた弁当にも、それをされたんです。さすがに感染対策を理由に断りました。断りやすい理由ができてよかったですが、コロナ禍でなければどうなっていたか、ゾッとします」(Aさん)
「一口ほしがる」人の言い分は
この「一口ちょうだい」のやりとりを認めるかどうかは「関係性にもよる」と言うのは、メーカーに勤務する20代女性・Bさんだ。コロナ禍以前、男性上司にランチに連れて行ってもらうと、やはり決まって「一口ちょうだい」と言われたそうだ。友人や家族から言われても何とも思わなかったが、上司には「不快感を覚えた」と振り返る。