60代以降の夫婦にとって生活の柱となる「年金」。その受給漏れを防ぐ時に重要になるのが、「妻の存在」だ。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏がいう。
「現行の年金制度においては、配偶者が一定の条件を満たした際に年金を増やせる仕組みが複数あります。そうした制度を漏らさず活用していくことが、夫婦の年金を守る秘訣です」
たとえば、年下の妻がいる場合、加給年金を受け取れるケースがある。
「サラリーマンだった夫が65歳になって年金受給が始まったら、生計を一にする年下の妻が年金を受け取り始めるまでの期間、“年金の扶養手当”として受け取れるのが加給年金です。
夫の厚生年金加入期間が20年以上で、妻の年収が850万円未満などの要件を満たせば受給できる。妻が厚生年金受給者で夫が『専業主夫』というパターンでも受け取れます」(北村氏)
加給年金は最大で年額約39万円。「5歳年下」の妻がいれば、妻が65歳になるまでの5年間でおよそ200万円の年金が上乗せされることになる。
加給年金の受給には、夫が65歳になった時の手続きが欠かせない。
「夫が65歳を迎える誕生日の3か月前に『年金請求書』が届きます。それに必要事項を記入して、受給者の戸籍謄本と世帯全員の住民票の写しを添えて年金事務所に提出します(別掲図2)。収入を証明するために、妻の所得証明書または非課税証明書が必要になることにも注意しましょう」(北村氏)
年金は基本的に受け取る権利が発生して5年経つと時効となり、受給できなくなる。必要な時に必要な手続きをしなくてはならない。