地方移住と聞くと「物価の安い田舎で不便を楽しむ」「収入は下がるけど生活も贅沢を我慢して楽しもう」といったイメージを持つ人もいるかもしれない。確かに、東京よりも地方の方が賃金が下がってしまうことも少なくないが、その半面、メリットもある。
別掲のグラフにあるように、地方は東京に比べ、家賃が格段に安い。都会で家計の大きな割合を占める居住費を、地方ならほかに回すことができる。年金支給額はどこに住んでも変わらないことだし、都会に住んでいる人であれば、地方移住という選択肢もあるわけだ。
もっとも、どこに住むか、その選択は重要だ。フィンウェル研究所代表の野尻哲史さんはこう話す。
「地方移住は不便な田舎暮らしを指すものではありません。生活のクオリティーを守りながら、生活費だけを下げる暮らし方です。ある60代のご夫婦は東京から長崎に移住しましたが、ご主人は東京にいたとき思い描いていた、食事作りとランニング、読書を日課にしています。移住先を決める際は、それまでの生活とあまり変わらない生活が送れるよう、電車やバスなどの交通機関が整っている土地を選ぶべきです。商業施設や医療機関がそう遠くないところにあることも大切な条件となります」
地方に暮らすといっても、人里離れた場所で山ごもりをするわけではないので、どんな場所を選ぶかが肝要となる。
地方移住するなら…おすすめの8都市
生活のクオリティーを保ちながら生活費だけを下げるには、一定の条件をクリアしている都市部への移住が有効だが、前出・野尻さんによると、新潟市、熊本市、鹿児島市、松山市、高松市、岐阜市、奈良市、前橋市の8都市がおすすめだという。その理由を聞いた。
「人口は30万~70万人の中規模都市がおすすめです。大きすぎず小さすぎない都市といったところです。さらにコンパクトシティーを標榜していれば、徒歩圏内に公共施設や商業施設を集中させているため、使い勝手もいいでしょう。移動時間が減れば時間に余裕ができ、趣味などに費やす時間を増やすことも可能です。
また、生活費や家賃が低いことも重要です。東京23区を100として、消費者物価指数が96以下、家賃指数(別掲図参照)が47以下といった地方都市が該当します。かつ人口密度が1平方キロメートルあたり1000人以上というような条件で探してみてはどうでしょう」(野尻さん・以下同)